みなし仕入れ率は、消費税の「簡易課税制度」で仕入税額控除をざっくり計算するための割合です。
言い換えると、実際の仕入税額を集計しなくても、売上にかかる消費税額から一定割合を差し引ける仕組みです。
この記事は「みなし仕入れ率とは簡単に言うと何か」を最短で理解し、事業区分の当てはめと計算のつまずきポイントまで整理します。
制度は申告の負担を軽くする一方で、選び方と区分ミスで納税額が変わるため、根拠と手順をセットで押さえるのが近道です。
みなし仕入れ率とは簡単に言うと何か
みなし仕入れ率とは、簡易課税制度で「仕入れにかかった消費税額」を売上側から推計するための割合です。
国税庁の説明では、事業区分ごとに定められたみなし仕入れ率を用いて仕入控除税額を計算します。
みなし仕入れ率が登場するのは簡易課税制度だけ
みなし仕入れ率は、消費税の計算方法のうち「簡易課税制度」を選んだときに使います。
原則課税のように、仕入税額控除の根拠となる請求書や帳簿から仕入税額を積み上げる方式とは別ルートです。
制度の概要と要件は国税庁のタックスアンサーが一次情報として分かりやすいです。
- 使う制度は簡易課税制度
- 目的は納税事務の負担軽減
- 根拠は国税庁の解説を確認
みなし仕入れ率の数字は控除に回す割合
みなし仕入れ率の90%や60%は、売上にかかる消費税額のうち「仕入れ相当として差し引ける割合」を表します。
納税額のイメージは、売上税額から売上税額×みなし仕入れ率を差し引いた残りになります。
同じ売上でも、みなし仕入れ率が高いほど控除が大きくなり、納税額は小さくなる傾向です。
| 見方 | 控除に回す割合 |
|---|---|
| 例 | 売上税額100万円×80%=80万円が仕入控除相当 |
| 結果 | 納税は100万円-80万円=20万円のイメージ |
6つの事業区分ごとに率が決まっている
簡易課税では事業を第1種から第6種までの6区分に分け、区分ごとにみなし仕入れ率が固定されています。
区分と率は国税庁が一覧で示しており、判断の出発点はここです。
自社が複数の事業を行う場合は、課税売上を区分して率を当てることが前提になります。
| 事業区分 | みなし仕入れ率 |
|---|---|
| 第1種 | 90% |
| 第2種 | 80% |
| 第3種 | 70% |
| 第4種 | 60% |
| 第5種 | 50% |
| 第6種 | 40% |
原則課税との違いは請求書集計の有無
原則課税は、課税売上と課税仕入れを集計し、仕入税額控除を実額で計算します。
簡易課税は、売上税額を基礎に、みなし仕入れ率で仕入税額控除相当を算出します。
そのため、実際の仕入れが多い業態でも、みなし仕入れ率が低いと控除が追いつかず納税が増えることがあります。
- 原則課税は実額集計
- 簡易課税は率で推計
- 得か損かは実態次第
ざっくり計算の流れは3ステップ
簡易課税の計算は、課税売上から売上に係る消費税額を把握し、そこにみなし仕入れ率を掛けて控除額を作ります。
最後に、売上税額から控除額を差し引いた金額が納税額の基本形です。
計算式の骨格は国税庁の説明に沿って確認すると安心です。
| ステップ | やること |
|---|---|
| 1 | 課税売上に係る消費税額を出す |
| 2 | 売上税額×みなし仕入れ率で控除額を出す |
| 3 | 売上税額-控除額で納税額を出す |
インボイスの時代でも率自体は変わらない
インボイス制度の導入で、原則課税では適格請求書の保存などがより重要になりました。
一方で簡易課税は、仕入税額控除を率で算出するため、日々の適格請求書の突合せ負担が相対的に小さくなる場面があります。
ただし、簡易課税を選ぶには届出や要件があり、また自社の取引構造によっては納税額が増えることもあるため注意が必要です。
- 原則課税はインボイス対応の影響が大きい
- 簡易課税は率で控除を作る
- ただし選択と適用要件は別途確認
2割特例と混同しやすいので整理する
2割特例は、インボイス発行事業者になった小規模事業者の負担軽減措置で、簡易課税とは別制度です。
2割特例は原則として申告時に適用を選び、課税売上に係る消費税額の2割を納税額の目安にする考え方です。
適用期間や要件は国税庁の2割特例の案内で必ず確認します。
| 制度 | ポイント |
|---|---|
| 簡易課税 | 売上税額×みなし仕入れ率で控除額を作る |
| 2割特例 | 課税売上に係る消費税額の2割を納税の目安にする |
| 確認先 | 国税庁の簡易課税と2割特例ページ |
みなし仕入れ率の一覧をまず押さえる
みなし仕入れ率の理解は、区分と率を丸ごと覚えるより、区分の特徴を押さえて自分の売上に当てはめるのが早道です。
国税庁の一次情報で率と区分を確認する
率と区分は国税庁の「簡易課税制度」と「事業区分」のページが一次情報です。
制度は法令等の時点が明記されているため、更新日も含めて参照すると安心です。
確認先としては、簡易課税制度の概要は国税庁 No.6505、事業区分の定義は国税庁 No.6509が基準になります。
| 情報 | 参照先 |
|---|---|
| 制度概要 | 国税庁 No.6505 |
| 区分定義 | 国税庁 No.6509 |
| 確認のコツ | 法令等の時点も見る |
区分は取引単位で判定する意識を持つ
事業区分の判定は、原則として「課税資産の譲渡等ごと」に行うと国税庁が示しています。
同じ会社でも、売上の中身が卸と小売と役務提供で混ざると、区分も混ざる可能性があります。
まずは売上の種類を分けて整理することが、みなし仕入れ率を正しく当てる最短ルートです。
- 売上を取引の種類で分ける
- 混在するなら区分別集計を前提にする
- 根拠は国税庁の事業区分の考え方
よく出る区分の目安を先に覚える
第1種は卸売業で90%、第2種は小売業などで80%、第6種は不動産業で40%という大枠が頻出です。
サービス業は第5種の50%に入ることが多いですが、飲食店業は第4種に入るなど例外もあります。
迷う場合は業態名だけで決めず、国税庁の定義文に自分の取引を当てはめます。
| 頻出 | 区分のイメージ |
|---|---|
| 卸売 | 第1種 |
| 小売 | 第2種 |
| 製造・建設 | 第3種 |
| 飲食店 | 第4種 |
| 不動産 | 第6種 |
事業区分を間違えない判定手順
みなし仕入れ率で一番多い失敗は、率の暗記不足よりも、事業区分の判定を雑にしてしまうことです。
卸と小売は販売先と形状変更の有無で考える
卸売業は、購入した商品を性質や形状を変更せずに他の事業者に販売する事業と整理されています。
小売業は、購入した商品を性質や形状を変更せずに販売する事業で、卸売業に当たらないものとされています。
販売先が事業者か消費者か、帳簿や書類で事業者向け販売が明らかかという視点を持つと判定の精度が上がります。
- 変更せず販売かを確認
- 販売先が事業者かを確認
- 根拠は国税庁の卸と小売の定義
製造小売や軽微な加工は境界で迷いやすい
製造業には製造小売業が含まれるとされており、単純な小売と同じ扱いにならない場合があります。
一方で、食料品小売店が仕入商品に軽微な加工をして同じ店舗で販売するケースなどは、第2種として差し支えない旨が示されています。
自社の加工が「軽微」に当たるか、販売形態がどうかを、国税庁の具体説明に照らして判断します。
| 論点 | 見るポイント |
|---|---|
| 製造小売 | 製造業扱いになり得る |
| 軽微な加工 | 小売扱いで差し支えない例がある |
| 確認先 | 国税庁 No.6509 の具体説明 |
飲食店業はサービス業ではなく第4種になりやすい
サービス業は第5種に入ることが多い一方で、飲食店業は第4種の具体例として挙げられています。
同じ「サービス」に見えても、提供内容が飲食店業に該当するかで区分が変わることがあります。
店舗型か、提供形態がどうかなどを、国税庁が示す飲食店業の例示で確認します。
| 見落とし | 起きやすいこと |
|---|---|
| 分類ミス | 第5種で処理してしまう |
| 影響 | 率が変わり納税額が変動 |
| 対策 | 国税庁の具体例に照らす |
簡易課税の計算を最短で理解する
計算を理解するコツは、難しい例外よりも、まず基本形と複数事業の扱いを押さえることです。
基本形は売上税額から率で作った控除額を引く
簡易課税では、売上げに係る消費税額を基礎に、みなし仕入れ率を乗じて仕入れに係る消費税額相当を算出します。
その金額を売上げに係る消費税額から控除して納税額を計算します。
計算の考え方は国税庁 No.6505の概要に沿って確認すると迷いが減ります。
| 要素 | 内容 |
|---|---|
| 売上税額 | 課税売上に係る消費税額 |
| 控除額 | 売上税額×みなし仕入れ率 |
| 納税額 | 売上税額-控除額 |
複数の事業があるなら売上を区分して計算する
複数の事業を営む場合は、原則として事業区分ごとに課税売上高を区分し、区分ごとに率を当てます。
この区分ができていないと、制度のメリットが出にくくなることがあります。
実務では、売上データの科目設計や請求書の区分管理がカギになります。
- 区分別に売上を集計する
- 区分別に率を当てて控除額を作る
- 会計データの設計が実務の近道
区分していない部分は最低の率になるリスクがある
国税庁は、2種類以上の事業を営む事業者が課税売上げを事業ごとに区分していない場合、区分していない部分は一番低いみなし仕入れ率を適用すると示しています。
一番低いみなし仕入れ率は第6種の40%なので、区分できない売上が多いと納税額が増えやすくなります。
区分の手間を省いて簡単にしたつもりが、逆に不利になる典型なので注意します。
| 状況 | 区分できていない売上がある |
|---|---|
| 扱い | 最も低い率を適用 |
| 結果 | 控除額が小さくなりやすい |
インボイス制度で気を付けるポイント
インボイス制度の導入後は、原則課税と簡易課税と2割特例の選択が実務と納税額に直結しやすくなりました。
簡易課税の適用要件は売上基準と届出がセット
簡易課税は選択制であり、所轄税務署長に「消費税簡易課税制度選択届出書」を提出した課税事業者が対象になります。
加えて、基準期間の課税売上高が5,000万円以下の課税期間について適用できると国税庁が示しています。
要件の一次情報は国税庁 No.6505で確認します。
| 要件 | 内容 |
|---|---|
| 売上基準 | 基準期間の課税売上高が5,000万円以下 |
| 手続 | 簡易課税制度選択届出書の提出 |
| 性質 | 選択制 |
2割特例は対象者と期間が明確に決まっている
2割特例は、免税事業者がインボイス発行事業者となる場合などに負担を軽くするための経過措置です。
適用期間の考え方は課税期間により表現が変わるため、国税庁の資料で自分の課税期間に当てて確認します。
案内ページとして国税庁の2割特例特設ページや、概要資料国税庁の2割特例パンフレットが参照先になります。
- 簡易課税とは別制度
- 対象者の要件がある
- 適用できる課税期間が決まっている
インボイス登録後でも簡易課税の届出期限に注意する
簡易課税の原則の届出期限は「その課税期間の初日の前日まで」と国税庁が示しています。
ただし、インボイス発行事業者の登録を受けて登録日から課税事業者となる場合には、その課税期間中に届出書を提出すれば当該課税期間から適用できる扱いが記載されています。
特例の当てはまりは状況で変わるため、届出の前に国税庁 No.6505の手続き欄を確認します。
| 原則 | 課税期間の初日の前日までに提出 |
|---|---|
| 例外 | インボイス登録を契機に当該課税期間中の提出で可の場合がある |
| 確認先 | 国税庁 No.6505 の手続き |
みなし仕入れ率が向くケースと向かないケース
簡易課税は万能ではなく、事務負担と納税額のバランスで向き不向きが分かれます。
向くのは請求書の突合せ負担が重いビジネス
取引件数が多く、仕入や経費の請求書を大量に扱う業態は、原則課税の集計負担が重くなりやすいです。
簡易課税なら、仕入税額控除相当を率で作るため、集計の粒度を下げられる場合があります。
ただし、会計帳簿が不要になるわけではないので、必要書類の保存と区分管理は別途押さえます。
- 取引件数が多い
- 経理工数を下げたい
- 区分管理は必要
向かないのは設備投資や課税仕入れが大きい年
原則課税では大きな課税仕入れがあると仕入税額控除が増え、場合によっては還付につながることがあります。
簡易課税では実額控除ではないため、実際の仕入税額が多い年でも控除が伸びない可能性があります。
大きな投資の前後は、単年ではなく複数年で納税額の差を試算するのが安全です。
| 状況 | 影響 |
|---|---|
| 設備投資が大きい | 原則課税が有利になり得る |
| 仕入が少ない | 簡易課税が有利になり得る |
| 判断 | 複数年で試算 |
同じ売上でも率が低い区分は納税が増えやすい
みなし仕入れ率が低いほど控除額が小さくなるため、納税額が増えやすい構造です。
第6種の40%などは、実際の課税仕入れが多い業態だと不利になりやすいケースがあります。
反対に、人件費の比率が高く課税仕入れが相対的に少ない業態では、簡易課税が合うこともあります。
- 率が低いほど控除が小さい
- 課税仕入れが多いと不利になりやすい
- 人件費比率が高いと合う場合もある
手続きと縛りを知ってから選ぶ
簡易課税は「選べば終わり」ではなく、届出期限と不適用の制限を理解してから選ぶと失敗が減ります。
選択届出書の提出期限は課税期間の初日の前日まで
簡易課税を適用したい場合は、原則として課税期間の初日の前日までに選択届出書を提出します。
この期限を過ぎると、原則課税で申告することになり、事務負担の見込みが崩れることがあります。
期限の一次情報は国税庁 No.6505の手続き欄で確認します。
| 提出期限 | 課税期間の初日の前日まで |
|---|---|
| 提出先 | 納税地の所轄税務署長 |
| 書類 | 消費税簡易課税制度選択届出書 |
不適用に戻すのはすぐにはできない
簡易課税の適用をやめる場合は、不適用届出書を提出する必要があります。
ただし、原則として適用開始から2年を経過する日の属する課税期間の初日以後でないと不適用届出書を提出できない旨が国税庁に記載されています。
短期の損得だけで選ぶと、想定外の縛りが発生するため注意します。
- やめるには不適用届出書が必要
- 原則として2年の継続制限がある
- 短期の節税だけで決めない
売上が5,000万円を超えると簡易課税は使えない
基準期間の課税売上高が5,000万円を超える場合、その課税期間は簡易課税制度を適用できないと国税庁が注意事項で示しています。
届出書を出していても自動で適用されるわけではなく、要件を満たすかは毎期チェックが必要です。
売上が成長している事業ほど、将来の切替えも見据えておくと安心です。
| 基準 | 基準期間の課税売上高 |
|---|---|
| 上限 | 5,000万円 |
| 超えた場合 | その課税期間は簡易課税不可 |
迷ったときに押さえる要点
みなし仕入れ率は、簡易課税制度で仕入税額控除を率で作るための割合です。
率は第1種から第6種の事業区分で固定され、区分の判定は取引の内容に沿って行います。
複数事業があるなら売上を区分し、区分できない部分に最低率が当たるリスクを避けます。
インボイス後は2割特例との比較も重要で、要件と適用期間は国税庁資料で必ず確認します。
最終的には、事務負担の削減効果と納税額の差を試算し、届出期限と2年縛りまで含めて判断すると納得感が高まります。
